冷酷男子の溺愛
それからというもの、微動だにしない奴のせいで
わたしの心臓はドキドキしっぱなしだった。
……本当、やめてよ。
顔が近すぎるんだってば。
……っていうか、これでもし寝過ごしたらどうするのよ。
こころのなかでそう思いつつも、気持ちよさそうに眠っている彼をむやみに起こせるわけもなく
あとは運にしがみつくという結果になった。
ーー
「……っねむい」
バスの衝撃とともに、ムクリと起き上がる瀬戸内くん。
「……え、俺寝てたの?」
いやいやいや、バリバリ寝てたじゃないですか。
と、つかさずツッコミを入れたくなるくらいのおとぼけ加減。
さては、こやつ、寝ぼけているな。
んーと言って、いきなり両腕を上げて伸びる瀬戸内くん。
「いだいっ」
「……」
その腕がわたしに当たってもお構いなしだ。