冷酷男子の溺愛
「いだい、いたい、腕当たってるよ、瀬戸内さん、腕どけて」
「んー」
遠慮というものを知らず、思い切り伸びる瀬戸内くん。
きさま、さては寝ぼけているな。
まだ寝ぼけているな。
「……寝ぼけてないから、っていうか全部筒抜けだから馬鹿じゃないの」
寝ぼけていると踏んで、思い切りガン見していると心を見透かされ……じゃなかった。
普通に声に出ていたらしい。
わあ、恥ずかしい。どうしよう。
一人で葛藤していると、バチっと目が合う。
「……な、なな何」
「……」
何を言うわけでもなく、ただ黙ってわたしの肩に手を置いた。
「───肩、重くなかった?」
「……っ」
いやだいやだ、やめてくれ。
こんな近い距離で、こんな優しい眼差しで
こんなに甘えたような声で心配されたら、わたしの心臓がもたないから。
わたしはきっと瀬戸内くんの緩急をつけてくる対応に弱い。