冷酷男子の溺愛
「着いた」
まるで何事もなかったかのように、冷静な顔をしていた彼。
憎い、憎たらしい。
「……よし、じゃあ、早く行こう」
だからわたしも負けじと、何も気になんかしていないという雰囲気を醸し出した。
本当は心臓バックバクのくせして強がった。
ーー
バスから降りてすぐだった。
「───」
目の前に広がる建物を見た途端、わたしは絶句した。
視界に入ってきたのはラーメン店。
な、何、なに、なに。
この場所にたどり着くまでの普通電車の1時間半とバスの30分
合計2時間のわたしの時間と、さっきまで感じていたドキドキ感を返してくれ。
ラーメンは、いつも食べてる。
ラーメンは、いつでも食べれる。
「……わたしの時間を返せコラ」
すべてを無駄にしてしまったような絶望感とやるせない気持ちを素直に吐き出した。