冷酷男子の溺愛
「……み、な、せ……た、く、ま」
わたしは目を大きく見開いたまま、店員さんのネームプレートを読み上げていた。
み、な、せ。みなせ、みなせ、水瀬。
た、く、ま。たくま、拓真。
次々と頭の中に文字が入り込んでくる。
「──────拓、ちゃん?」
『おーい、知奈たまには店を手伝えって言ってるだろうが……ったく』
なんだかんだいつも甘くて、優しくて
『俺がいなくても、強くなるんだぞ、みんなを頼む』
でも、どこか儚かった。
わたしにとっては、大切で大切で仕方のない家族。
たった一人の兄、拓ちゃん。
彼も今、わたしと同じように口を開けたまま、動けないでいる。
「────知、奈か?」