冷酷男子の溺愛
3rd: 告白
・ 遠い日のぬくもり
ーー
わたしは拓ちゃんとふたりで
あのお店の前にあるファーストフード店に来ていた。
ただし拓ちゃんが仕事中ってこともあったので
代わりに瀬戸内くんを働かせることの条件につきで。
「……知、奈」
「拓、ちゃん」
いつぶりだろうか。
きちんと顔をみて、話をするのは。
「……知奈」
「拓ちゃん」
昔の思い出が走馬灯のよう駆け巡る。
わたしたちは目の前の出来事が夢でないことを願いながら、お互いの存在を確かめるように名前を呼び合った。
「……知」
「……拓ちゃん」
──── やっと、会えたね。
流れ出るナミダを止めるにはどうしたらいいのだろう。
しばらくの間、注文したポテトも食べずに、お互い顔を見合わせていた。
ーー約4年ぶりに、わたしはたった一人の兄妹と再会した。
「拓ちゃん、何があったか教えて」
彼は別れも告げずに家を出て行った。
たった一人で、知らない地へと足を踏み入れた。
そうまでした理由を、わたしは知りたい。