冷酷男子の溺愛
───ガラっとラーメン屋さんの扉を開ける。
「瀬戸内くん、帰ろう」
もう、嫌なんだ。早く帰ろう。
拒絶されたことを、認めたくないの。
黒のエプロンをして、颯爽と餃子を焼く彼は真剣そのものだった。
接客は相変わらずの無表情だったけど、
「───あれ、どうしたの」
わたしの声が、聞こえなくなるくらい集中していると思うと
その真剣さにに恐れおののいた。
「拓真くんは?ちゃんと和解できた?」
「……」
だけど、この時のわたしは、自分のことでいっぱいいっぱいで
どうして瀬戸内くんが拓ちゃんの名前を知ってるのか、というところまで気が回らなかった。
ただ、みっともないくらいに
「……ダメだった、帰ろう、瀬戸内くん」
感情をむき出しにした。
「……おいっ、泣くなって」
「ごめん、ね」
『俺はずっと知奈の味方だからな』
どこまでも優しくて、心の支えだったキミは、どこかへ行ってしまったの?