冷酷男子の溺愛




───ガラっとラーメン屋さんの扉を開ける。



「瀬戸内くん、帰ろう」


もう、嫌なんだ。早く帰ろう。

拒絶されたことを、認めたくないの。



黒のエプロンをして、颯爽と餃子を焼く彼は真剣そのものだった。


接客は相変わらずの無表情だったけど、



「───あれ、どうしたの」


わたしの声が、聞こえなくなるくらい集中していると思うと


その真剣さにに恐れおののいた。




「拓真くんは?ちゃんと和解できた?」

「……」



だけど、この時のわたしは、自分のことでいっぱいいっぱいで

どうして瀬戸内くんが拓ちゃんの名前を知ってるのか、というところまで気が回らなかった。



ただ、みっともないくらいに


「……ダメだった、帰ろう、瀬戸内くん」



感情をむき出しにした。



「……おいっ、泣くなって」

「ごめん、ね」





『俺はずっと知奈の味方だからな』


どこまでも優しくて、心の支えだったキミは、どこかへ行ってしまったの?




< 124 / 321 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop