冷酷男子の溺愛
・ 平穏な生活の行方
ーー
「お父さん、お母さん、ちょっといいから来て大変だから!!」
いきなりこの家に住むと言い出して、さらにはわたしの駐輪スペースを奪った人間が来たとなれば大問題!
わたしは所詮顔だけ男に制裁を加えるために、大急ぎでお店へ駆け込んだ。
「……どうした、知奈」
「なあに、そんなに慌てて」
しかしどこまでものん気な両親。
おい、おい、しっかりしてくれよ。
「どうしたとかそんなこと言ってる場合じゃない!
この家に住むとか言う新手の詐欺師が来てるから
ここは潔くぎゃふんと言わせて追い払って!」
形相を変えて叫ぶ娘を見て唖然とする、
大らかな父としっかり者の母と
そして今年で72を迎える老いぼれ祖父。
「……お邪魔します」
「はい、いらっしゃい」
そしてこんな緊迫している時に一人お客が入店してきた。
この我が家の緊迫した空気のなかでもズケズケと入ってこれるとは中々の神経をお持ちである。
「ちょっ、今は……」
「いらっしゃい、來くん待ってたよ」
「荷物は階段のところにあるから今取ってくるわね」
しかし、その男は、学校の転校生の瀬戸内くんで
父も母もそして祖父も彼に優しい笑顔を向けていた。
「えっ」
どうしよう、驚きが止まらない。