冷酷男子の溺愛
───痛いくらい、胸に刺さった。
わたしと拓ちゃんは、驚きを隠せなくて口をパクパクして顔を見合わせた。
「來」
「瀬戸内くん」
声が揃う。
ーー何故、キミは人の心の中がわかるのだろうか。
隠し通そうとしたわたしの気持ちも、遠く離れていた彼の気持ちも、全部全部理解していて
超能力でもあるんじゃないかと、今度こそ本気で疑うよ。
「……拓ちゃん、わたしたち家族が、嫌になったんじゃ、ないの?」
「……な、れるわけがない」
本来なら、知ることのできなかった気持ち。
「……っていうか、知奈の方こそ、俺の部屋泣きながら掃除してるって何?
俺、あの家帰ってもいいの?」
「……あったり前じゃん、家族だもん」
本来なら、伝わることのなかった気持ち。
ねぇ、瀬戸内くん。
キミは一体何者なの、何を考えているの、それは何のために。
本当、読めない。わからない。
わたしはキミは不思議で不思議で仕方がないよ。