冷酷男子の溺愛
「……俺は、置いてったことも、置いてかれたこともあるから、まぁ、あれだよ経験者は語るって感じ?」
この笑顔は、哀しい。
まるで心の中を偽り続けてあるようで
ーーやっぱりわたしには、泣いているようにしか見えなかった。
「もうすぐ着くから、降りる準備して」
追い討ちをかけるように、家までの距離が縮まり、この話にも終止符が打たれる。
「俺のことは心配しなくていいから」
いつもの人を見下すような言い方から一転
今日の彼の言葉は柔らかい。
だけど、決して自分の胸の内を明かそうとはしないで
静かに、優しく、誤魔化す。
たったひとつ。
『俺は置いてったことも、置いてかれたこともある』
キミの、泣いているようにしか見えない笑顔の秘密は、ここにあるのだろう。