冷酷男子の溺愛
「でね!でね!昨日拓ちゃんと電話してて仲直り出来たのは瀬戸内くんのおかげだから、お礼したいね、って」
「……うん」
「だから!どこか行きたいところある?わたしたち水瀬兄妹が連れて行ってあげる」
手を腰にあてて、ドヤ顔をかます。
「んふふー」
「なに、ニヤけてんの、きもい、寝てろ、クズ」
口がものすごく悪いので寝ぼけているだろう彼の頭を揺すって「さっ遠慮なく言いなさい」と騒ぐ。
「は、なせ、あと顔近いから」
「……はっ、ここ布団かっ」
完ぺきに深夜テンションで、瀬戸内くんに絡んでいたことに気づく。
「ごめんごめん」
わたしだったらノックなしで部屋入られるだけで怒るのに、これはこれは申し訳ないことをした。
「ごめんね、本当ごめんね、ただわたしはこの喜びを誰かに伝えたかっただけなの」
「謝る暇があるなら寝とけ」
「わかったわ……おやすみ……パタリ」
そのまま、奴の掛け布団の上に、死んだふりをした。
恐るべき、深夜テンション。
今宵、人はアルコールを摂取しなくても、酔えることを知りました。