冷酷男子の溺愛
「だから、やっぱり絶対許さない」
「あ、そう。
じゃあ來くんこっち来て。あんな小娘ほっといていいから」
「お、お母さん!」
ひ、ひどい。
今回は前もって話してくれなかったお母さんに非があるのに……ひどすぎる。
「ほら、知奈も荷物運ぶの手伝いな」
「……はい」
わたしは独裁体制のお母さんにねじ伏せられ、あえなく撃沈した。
ーー
「この部屋使っていいからね」
ある部屋の前で、お母さんは言った。
……な、なに言ってんの、お母さん。
その部屋は、その部屋は……
「……ダメっ……やだっ」
絶対に使わせない。
「……知奈」
「なに言ってんの、お母さん。どうしちゃったの、お母さんっ……」
お母さんの肩を揺する。
目には不思議と涙が浮かぶ。
だって……わたしたち家族が諦めてちゃいけないんだから。
「知奈……拓は、……拓はね……」
「……お母さん。
ここは拓ちゃんだけの部屋だよ、拓ちゃんの、だよ」
「そう、だね……」