冷酷男子の溺愛
それに。
半年も経って、口をきかないどころか顔すら合わせてないのに、未練たっぷりのところとか。
“瀬戸内”って言葉を聞くたびに、反応しちゃうわたしの姿なんて、この上なく、情けない姿だから。
幻滅させたく、なかったの。
周りはもう、みんな前を向いてる──のに。わたしだけ、取り残されている。
「……あーあ」
こんなはずじゃ、なかったんだ。
当初の予定では。罵られることも、くだらない口喧嘩もなくなって清々するはずだったんだ。
バイトの洗い物を押し付け合うこともなくなって、たちの悪い八つ当たりにイライラすることもなくなって。
いいことだらけ、のはずなのに。
「……」
どうしても、君のいない毎日は物足りなくって。
どこかではやっぱり、まだ寂しくて。
────だから。
「頼りないとかそういうことじゃないの」
「雅稀にはいつも、感謝してる」
これは諦めきれない、自分のせい。