冷酷男子の溺愛
真っ白な頭のまま、必死に声を絞り出す。
「……な、めてるなんて、そんなことない」
「じゃあ、馬鹿なの?」
「え、」
「どう考えても、何かあったくせに、頑なに大丈夫って殻に閉じこもるソレ」
「俺は毎回慰めてきたけどさ、結局は自分の気持ちを押し殺すヒロインの気分を楽しんでるだけでしょう」
「……雅稀、何言って」
「好きな人にフラれて、報われない恋を追い続けようとして。悲劇のヒロインになれた気分はどうだって言ってんの、ねえ、お姫さま」
彼の言葉のひとつひとつが、まるで刃のように尖って、心に突き刺さる。
雅稀だけは、絶対にわたしを傷つけるようなことはしないから、といつも相談に乗ってもらっていた。
雅稀だけは、自分を否定するようなことは言わないから、といつだって。
自分の気持ちにコントロールが効かなくなった時には、つい頼ってしまっていた。
──── でもそれって。
「……ごめんなさい」
甘えてた、なんてもんじゃない。
わたしは雅稀を利用してたんじゃないか。