冷酷男子の溺愛




「ごめんなさい」



そう、とだけ口にして顔をあげると、一瞬。


雅稀がハッと目を見開いた。そして3秒くらい固まって。




「……なにしてんの、俺」




────途端、慌て出す。




みるみるうちに青くなっていく顔色。

手元を見ると微かに震えていて。




「ごめんね、本当にごめんね、俺こんなことが言いたいわけじゃなくって」



目が、離せない。



「────はは、おかしいな。いつもなら、ちゃんと笑えてた、はずなのに」


「どうしてだろう、今日は、知奈がまだあの男を想ってるって考えただけで吐き気がしてイライラが止まらない」



「俺は幼い頃から知奈だけに優しくしてきたのに、突然現れた男にとられてたまるかよ、って思ってても、いつだってちゃんと我慢できてたはずなのに」


「────知奈、ごめん、傷つけるつもりなんかなかったんだ」





彼の、かすれそうな声が、うまく頭に入って来なくって。


わたしはしばらくの間、その場に立ち尽くしていた。




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