冷酷男子の溺愛
・ わかりにくい優しさ
「まだ彼女って決まったわけじゃないよ」
────夕暮れ。玄関でうずくまるわたしに慰めの声をかけてくれたのは、やっぱり雅稀。
「そうしょげるなよー」
「……」
気にすることはない、と雅稀は言うけれど。
き、気になるんだーい。
美菜、って親しく名前で呼んで、電話までする仲で。
挙句の果てには、家を行き来までするんだぞ?
わたしは彼がどこ住みかも知らないというのに。
気になるっていうか。
「もーうーだーめーだーおーわーたー」
「……」
「彼女だ彼女、くっそ、憎たらしい」
のしかかるのは、敗北感。
もはや、勝ち目ないんすけど。
へーんだ。もうやだ、知らない、あんな奴知らない。
勝手にそこらの女と付き合えばいい。
「……」
嘘、やだ、無理。
やだもう吐きそう。
────わたし、情緒不安定。笑