冷酷男子の溺愛
「……馬鹿、迷子なんてみっともねえから、とっとと帰るぞ」
彼はわたしの頭をポンっと軽く叩いて、でも、わたしを掴む手は、離さなくって。
微笑ましく、笑ったんだ。
────こ、んなの。
好き、すぎる。
好きの気持ちが詰まって、溜まりに溜まって、もうおかしくなりそうだよ。
「……なに、黙り込んで」
「────ず、るい」
「は?」
こんなにも簡単にドキドキしちゃう心、どうにかならないのかな。
瀬戸内くんの顔を見ても、声を聞いても、好きって思っちゃうなんておかしい。
お願いだから、誰かどうにかしてよ。
わたしだけ好き────なんて、ちょっぴり虚しいじゃない。