冷酷男子の溺愛
「……來っ、もう、どうしよう」
その日、あいにく天気は雨で、彼女は全身が濡れていた。
微かに肩が震えていて、肌も少し蒼白かった。
「……とりあえず入れば、風邪ひく」
化粧が雨と涙でぐちゃぐちゃで、放っておいたら冗談抜きで死んでしまいそうなくらい、弱っていた、美菜。
俺には、突き放すなんてできなかった。
「……あり、がとう……來」
───その日から、俺の中で、彼女の存在は変わった。
今までは口うるさいだけだったのに、この時にはもうすでに美菜に惹かれはじめていたんだ。
ーー
それから木曜日以外にも、連絡を取り合って会うようになって。
いつの間にか、一緒にいることが当たり前になっていった。
ファミレス行って語り尽くしたり、家でうだっとした時間を過ごしてみたり。
俺はこの時間が楽しかった。
すごく楽しくて、大切にしたいと思った。
「……」
でも、それは俺だけだったんだ。
この時間を大切にしたいと思ったのも、年の差なんてなんの障害にもならないと思っていたのも
──────俺だけ、だったんだ。