冷酷男子の溺愛
「……」
穏やかな時間だけが流れて、昔のことなんか忘れ去って
もう一度、自分の気持ちと向かい合おうとした。
とにかく過去なんてもうどうでも良いと開き直ることができて
今はあいつの喜ぶ顔が見れたらそれでいいかなって思えていた。
その時だった。
「───な、んで」
俺は、目を疑った。
なぜなら、目の前には、俺が女嫌いに陥った原因ともいえる美菜がいたから。
「……來、見つけた」
彼女の声は、忘れもしない。
忘れかけてた記憶が、一気にフラッシュバックする。
───嘘、だ。うそだ。嘘だ。
「……」
俺はまた、こいつに振り回されないと、いけないのか。
知奈に会って、やっと、冷え切った心が、溶けてきたっていうのに。
なんで、この、タイミングで、またお前に会わなければならない。
電話なら、この間もかかってきたけど、着拒にしたし。
家に来たとか言っていたけど、片道3時間もかかるんだから、来るわけないって……思ってて…来たのか、この人。