冷酷男子の溺愛



「……びっくりしたあ」

「あいつ、帰ったのか」

「らしい、ね」

いつも冷静なゆっちゃんでさえも、少し動揺していた。


わたしたちのクラスは、基本みんないい子で

さっきのケバ子’sでさえも、化粧はバカみたいにするけど学校をサボったりはしない。


な・の・に


……あの男は帰った。

少し話しかけられたくらいで帰った。

まったく、どんだけ忍耐力がないんだ。

ふっ、情けない。



「本当やな奴だったね、ゆっちゃん」

「そうだな、っていうかあの豹変ぶりはもはや脅威だろ」


みてみろよ、こいつとゆっちゃんの視線の先には


「オウジ……セイカク、ワルカッタヨ」


白目をむいているナミがいた。



「ナミぃいい!しっかりして!」

「モウ……イヤダ」


パタリ、とナミは机に倒れこんだ。



「ほら、ナミの奴、イケメンは絶対に性格いいからわたしの王子様にするっ!とか言ってたろ」


「あ、言ってたかも。

ナミったら外見はケバ子’sの一員みたいなのに恐ろしくピュアで脳内お花畑だから」


「キャラをどっちかに定めろ!って感じだよな」

「本当」



瀬戸内くんのことを悪く言っていたはずなのに

いつの間にか標的がナミへとすり変わっていた。


……ど、ドンマイ。



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