冷酷男子の溺愛
俺は、この人が本当に憎かった。
1メートル以内に女子がきただけでじんましんが出るような体になったし
女どころか、人を信じたくないって思う日だって長く続いし、散々だった。
本当、お前には、振り回されたよ。
だけど、当時、俺がもらった優しさが、すべて嘘ではないと思うから。
「……泣くなよ、お前が泣く意味わかんねえよ」
「だって、あたしを差し置いて幸せになるとか生意気っ」
もう、憎しみ続ける理由は、ない。
「……だけど、來には、絶対に幸せになってもらわなくちゃ困るのっ」
「あたしには出来なかったけど、幸せになってもらわなきゃ、困るのよっ」
……え、嘘。彼女は嘘泣きではなくて、本当に涙を流していた。
自分で裏切っておいて、何が幸せになってもらいたいだ、と思わず吹き出しそうになったけど
きっと、強情な彼女なりに、この1年間、考えるものがあったのだろう。
なんかもう、それだけで、十分だ。