冷酷男子の溺愛





ふと、我にかえると、見慣れない、部屋。

白をベースとしたシンプルな部屋は、ベッドとテーブルとテレビくらいしかない閑散とした部屋。


え、どこ?

怖いくらい生活感がない部屋に、わたしは驚きを隠せなかった。





「……俺の部屋だよ、ここは」




テーブルの前で、あぐらをかきながら、彼は優しくふわっと笑った。



「……あれ?」



不意に、違和感。

……なんだか君の笑顔が変わった気がして。



いつも含まれているはずの哀しみがすっかり晴れていて、心の底から笑えているようだったから。


……ふふっ。なんだろう。

つられてわたしまで笑顔になれる。




「……なになに?なんかいいことあった?嬉しそうだよ」


「……別に、そんなことねえよ」




否定はするものの、やっぱりどこか、嬉しそうな気がする。


だって、ほら。

ココアを持つ手が、ソワソワしてる。




「……うるさい」


わたしがあまりにもニヤニヤしていたからか、軽く頭を叩かれた。



え、なにその反応。

なんか、耳まで真っ赤で、すごく照れて、とてつもなく可愛い。




< 266 / 321 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop