冷酷男子の溺愛
・ 気づけば君の腕の中
***
「ねえ、」
蘇ってきた記憶に蓋をして、わたしはゆっくりと顔を上げた。
────チク、タク、と時計の音だけが部屋に鳴り響き、静かに時間が流れる。
心に溜まった、モヤモヤ。
全て吐き出してしまえ、とでも言うかのように一気に気持ちを露わにする。
「……わたしは、何度 」
声が震える。
「 瀬戸内くんに、 」
足も震える。
「 救 わ れ た ん だ ろ う 」
……わたしは、過去の記憶を辿れば、辿っただけ彼の優しさを見つけた。
でも、わたしは、記憶を辿れば辿っただけ、彼に助けられていた。
キミを苦しめてまで、わたしが助かる理由はなんなのかと思うと、胸が苦しくなった。