冷酷男子の溺愛

「憎悪が足りない」

「……」

「色気が足りない、これは元から期待してないけど」

「……」


「あとこうして見ると、すっごく幼い顔してんだな、あんた、ははは」


「……」



わたしが思いっきり叩いたからかな。

壊れちゃった。瀬戸内くん。



「……でも、そうやってジッと見ないでくれる？」


「え？何で」



彼は伏せていた目をあげて、そっとわたしと目線を合わせた。




「ーー意味もなく泣きたくなるから」

「……」


「なーんてな、嘘だよ、ほれ」


一瞬、ほんの一瞬だけ、哀しみを含んだ顔になったけど

何事もなかったように笑って、わたしの髪をクシャッとした。



「……っ」



女嫌いなんじゃないの？

触れないんじゃないの？



瀬戸内くんなんか、最低の鬼畜野郎だって思うのに


触れられた手は大きくて、あったかくて


その手から、彼の感情が伝わってくるかのように


なんだかわたしまで泣きたくなった。