冷酷男子の溺愛
「よくやったじゃん」
「……スッキリしちゃった」
店を出た途端、何とも言い難い達成感が全身に渦巻いた。
自然と笑顔になるわたしたち。
きっと、今日イチの笑顔。
「よしよしよし」
瀬戸内くんは、そう言ってわたしの髪をくしゃくしゃにかき乱した。
「……」
「ん?どした?」
「あ、ありがとう」
瀬戸内くんに背中を押してもらわなかったら
わたしはこの先もずっと、悠の浮気を見て見ぬふりをして傷ついてただろうから。
だからこれでも感謝してるんだよ。
「……べつに、お前のためにしたことじゃねえよ」
「照れんなよ」
「は、アホか」
キミはただの憂さ晴らしだと言ったけど
きっとそういう人だったら
今、こんなにも優しくて穏やかな顔をしてないんじゃないかな。
まだまだ謎ばっかりで、わかんないことだらけの人だけど
決して悪い人なんかじゃないって思うの。
「あー、マジあの恐怖で青ざめてく表情は堪んなかったわ」
容赦なくて、鬼畜で、腹黒い人だとは思うけど
たぶん、たぶん
悪い人なんかじゃない───