冷酷男子の溺愛
ーー
「───やっぱりお前馬鹿だよな」
部屋に入ると、さっきまでのやつれた様子の大人しい悠はいなかった。
彼のトゲトゲしい言葉でふと、我にかえる
……ああ、やってしまった。
また、彼の態度に騙されてしまったのだ。
……いや、もしかしたら彼だけではないのかもしれない。
この場にいたみんなの口車に乗せられてノコノコと密室に来てしまったのだ。
馬鹿だ、本当に馬鹿すぎる。
「───お前何様のつもり?」
今、目の前にいるのは、怒り狂った悠。
「───痛っ」
髪を引っ張られ、頬には鈍い衝撃。
……殴られた。
生理的ににじんでくる涙。
30cm以上も上から、睨みつけられ、頬にはジンとする痛みが広がって
恐怖で足がすくんだ。
「……お前は、俺だけを見てればいいんだよ」
彼と付き合ってもうすぐ1年が過ぎる。
それなりにお互いのことを理解していると思ったけど……違ったね。
わたしは彼のことをやっと理解できた気がする。