冷酷男子の溺愛
男の人が泣くところを、初めてみた。
こんなにも綺麗な涙を、初めてみた。
「ーーダサいな、本当」
彼は自分のことを、そう言ったけど
信じられるものを失ったわたしにとって
いつも無表情で、冷静な彼が見せてくれたその表情は
「ーーダサくなんかない」
今、何よりも欲しかった、人の温かみだった。
「──────」
彼の胸に顔を埋めて、叫ぶようにして泣いた。
あと、少しで、人間が怖くなるところだった。
好きだと言って、殴って
仲良くするフリをして、陥れる。
人間の豹変する姿を目の当たりにして、あと少しで
全部全部壊れてしまうところだった。