冷酷男子の溺愛
・ 近く遠くもどかしい
・・・
赤くなる頬は、きっと殴られたからだけではない。
わたしは熱くなる頬を押さえながら、無事に家に到着し、部屋へと入った。
ベットに倒れこみホッとひと息つくと、今日のことが一気に頭のなかに流れ込んで来る。
クズ男にはめられて、しかも頬を3発も叩かれたこと。
瀬戸内くんと仲良くしてるからってケバ子’sに勝手に妬まれたこと。
痛む頬。えぐられた心。
ーーでもそれだけではなかった。
「おい、入るぞ」
ノックもなしにガチャっと、ドアが開く。
「え、ちょ、ちょっと待ってよ!
勝手に入ってこないでー」
「うっさい、黙ってろ」
わかりにくい優しさだけど、この人にたくさん助けてもらった。
口は悪いし、わたしの意見なんて無視して部屋に入ってくるような人だけど
「───痛、むか?」
こう、時折声色を変えて、柔らかい眼差しでわたしを見るから
その視線が、その声が、わたしのなかの気持ちを震わせる。
「───っ、」
痛みつけられた心には、その優しさは身に余るほどしみて。
「え、何、何何。は、何で?
ちょっと待て、泣くな」
ーーどうしよう、涙が止まらない