冷酷男子の溺愛



今日は、お互いに変かもしれない。


わたしは普段めったに泣かないのに、今はこうやって泣きわめいてるし


彼は彼でいつも冷静で無表情なのに、こんなにもあたふたしてる。



「ほら、な?泣くなっ」


思いのほか気が動転しているようで

彼は慌てて服の袖でわたしの目頭を押さえて


まるで子どもをなだめる親のように、もう大丈夫だ、と言った。



……なんでだろう。


普段の彼ではなく、時折見せる彼の表情を見ると


胸が熱くなって涙が止まらないの。




「ーーねえ、瀬戸内くん」


学校でのキミは自分の都合の悪いことは聞き流して

一切関わりを持とうとしないのは何故ですか。


なのに家では、わたしの目覚ましを1時間遅くセットしたり

こっそり靴の上にダンゴムシ置いたり


地味な嫌がらせをしては、満面の笑みを浮かべているのは何故ですか。



でもピンチの時はわたしのために駆けつけてくれて、助けてくれて


一緒に涙まで流してくれるヒーローみたいになるのは何故ですか。



なかなか素顔をみえないキミに

聞きたいことがたくさんある。




ーーあなたは一体何者なのか、と






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