冷酷男子の溺愛
ーー
「ポテト、ポテト」
クソ、こうなったら、悔やんでも仕方がない。
楽しいことを考えようと思ったらポテトで頭がいっぱいになった。
「ポテト、ポテト」
楽しみすぎて頭の中はもはやポテト一色へと移り変わる。
あのほのかなイモの匂い、絶妙な油加減、最高。
「ポテト、ポテ……えっ」
ふと前を向くと転校生の瀬戸内くんがチャリで帰宅中だった。
うっそ……偶然。
まさか、瀬戸内くんと帰る方向同じだったのか、ラッキー。
しかし喜びも束の間。
「……」
彼はチャリをこぐのが遅いので、すぐに追いついてしまった。
「……えっ」
遅くないですか。
こぐの遅すぎないですか。
脚力ないんですか。
もしかしてギア1ですか。
越そうにも、ここは田舎道。
道路の両脇には田畑が広がっていて一車線しかないという驚愕の狭さ。
越そうと試みるも、車の邪魔になって思い切りクラクションを鳴らされたため
仕方なく彼の後ろをこいでいった。
「────」
ちぇっ。恥かいた。
こんな邪魔者、早くどこかへ行って欲しいのに。
なんでなかなか曲がってくれないの。
瀬戸内くんも私の家と同じ方面なのか
しばらく経っても目の前にいる彼に
ますますイラだちを覚えてた。