冷酷男子の溺愛
「知奈っ」
ナミとゆっちゃんも、わたしの後を追いかけてきたようで、呼び止められる。
「───待って、どうしたの」
「……声が、聞こえたの。悠と瀬戸内くんが喧嘩みたいになってた」
「……わかった、行こう」
きっと、体育館裏だ、と言ったゆっちゃんと
わたしだけ仲間はずれなんか許さないんだから、と言ったナミに
手を掴まれて、声のする方へ向かった。
どうか、どうか、もう何事もありませんように。
怒り、哀しみ、妬み、僻み。
もう……こんな感情をぶつけ合って、傷つけ合うのは嫌だった。