冷酷男子の溺愛
「……知奈。あいつは、瀬戸内は、知奈のことちゃんと見てるんだね、わかってるんだね」
ゆっちゃんは、少しだけ微笑みながら、優しい穏やかな顔をしていた。
彼の本性がわかったからなのだろう。
「……うぅー」
でも一方でナミは号泣していた。
「なんで泣いてんの?」
「わたし、知奈と友達なのに、何にもわかってなかったなと思って……」
知奈が傷つけられていたことにも気づけないなんて自分が情けない、と言った。
なんだ、それか。全然そんなことないのに。
「わたしは、ナミもゆっちゃんも大好きだってば、何今さら言ってんの」
「ふぇーん」
「ははっ」
そばにいてくれるだけでこんなにも安心できるってなかなかないよね。
ーー
お昼どき。
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
だけど、わたしたち3人は、しばらくその体育館裏に腰掛けていた。
澄み渡る空、透き通っている空気。
胸の奥にあったごちゃごちゃの気持ちも晴れていく。
3人で空を見上げて、本音をさらけ出して語った。
・・・
「───そこまで優しくさせたら惚れるよな」
「えっ、ちょっとまだ好きなんて一言も言ってな……」
「やだあ、知奈顔真っ赤ぁ」
近くなったり、遠くなったりする彼との距離は
とっても、とっても、もどかしかった。