お嬢様にはなりきれない!
「………誰に会いたいって?」

後ろから誰かに抱きしめられる。

それと同時に低くて優しい、心地よい声が耳を掠めた。

「あ、梓馬!?」

「……そうだけど?」

何焦ってんだよ、なんて眉を下げて笑う梓馬。

その顔を見てなぜか安心する私。

……え、何で安心してんの。


「……柚希?」

心配そうな声が聞こえた。


声がした方を見上げ、

「っ……!!」

思わず息を飲んだ。

梓馬との距離があまりにも近くて………



「誘ってんの?」

「……は?」

私とは対照的に、余裕の笑顔を浮かべる梓馬。

「怯えた目で見られると……な?」

にやにやしながら言われた。

………この男……………。

「最っっ低!」
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