あの夏の日をもう一度
運命
再開
それから、6年の月日がたとうとしていた。
私はどんどん妖力をあげ、今では森に出ることもできるようになった。けれど、まだ飛ぶことはできていない。私の羽はもしかしたら、かざりなのかもしれない。
「神琴!ご飯だ」
私はずっと、幸三と住んでいる。ご飯も人間のものをしっかりと食べている。
「セムナイ!」
セムナイも一緒に神社に住むことになった。私たちは家族も同然だった。
「いただきます!」
三人の声が重なりあった。
一斉に箸が絡み合う。これが日常だった。
「それ私の!」
「早いもんがちなのだよ、セムナイくん」
「なにを!ならばこれでどうだ」
「あっ!私の大好きな卵焼き」
「やめんか、ふたりとも」
「「はーい」」
こんな何気ない会話でも、幸せと感じる。
けれど、まだ過去のしがらみは消えていなかった。たまに夢で志帆が轢かれるところが何度も繰り返されることがある。2人には言ってないけど、気づいてると思う。
それでも、この時間を壊したくないと思う。けど、それができないことも心の中でわかっている。わたしの心はまだ、止まったまんまなのかもしれない。
「神琴、今日は私が村に行ってくるよ」
「うん」
セムナイと私は毎日交互に人に化けて村に出て米をもらってくるのが役目だった。
「今日の夕食はなにがいいんじゃ?」
「唐揚げ!」
「わかったわい」
その頃、バス停では
「おーい、健人!こっちだ」
「おっ!ばあちゃん」
健人はばあちゃんに手を振ったあと、森の方を見て、つぶやいた。
「約束、守りに来たよ。」