あの夏の日をもう一度
崩れる音
それぞれの想い
それから、工事の話は進んでいった。
セムナイはもう諦めていた。幸三もよく村の会合に出席するようになり、私達は顔を合わせなくなっていった。
けれど、私は諦めなかった。いや、諦めたくなった。ここでわたしは大切な人を持った。もう失いたくない。もう壊したくない。私はサグジのもとを訪れた。
「サグジ、出てきて」
「神琴か。何のようだ」
「この森を守りたいの」
村でも、神社を取り壊すことは広まっていた。中には反対派もいた。健人もその一人だったが、賛成派の方が多く取り壊しは絶対だった。
「こんなのおかしいよ。妖怪がいるからだなんて。」
健人は必死に訴えたが、三年も村にいなかった、中3のガキに耳を傾ける人などだれもいなかった。
健人にはどうすることもできなかった。
健人はよく神社に行くようになった。けれど、坊さんは神社にいることが少なくなり、坊さんと会うことはなくなった。それでも通い続けた。そんなある日、坊さんがいたので、健人たちは話すことになった。
「坊さん、どうすんだよ」
「わしも取り壊しなどしたくないわい、けどもうどうすることも出来んのじゃ」
「諦めんのかよ!」
「わしはここに残るよ」
「ど、どう言う意味だよ」
「さぁな」
そう言って、坊さんは境内の中へ入っていってしまった。
健人はこの意味がわかっていたはずだった