あの夏の日をもう一度
つながり
「神琴、その刀は!」
「そう櫻雷だよ」
私は刀を振り上げた。そして、健人の挟まった木を切った。木は健人の上から無くなった。それでも、健人は目を開けなかった。
「神琴、申し訳なかった。セムナイも健人も守ることができなかった。」
「大丈夫、セムナイはここにいるよ」
そういうと小さな体をひょこっと見せた。
「ごめんね、幸三さん。」
「..セムナイ、セムナイなのか?よかった。謝るな、無事だっただけで充分じゃ」
「二人は早く逃げて!」
「神琴はどうする?」
「私は健人を安全な場所に置いてからすべてを終わらせる。」
「どういうことじゃ、神琴」
私は幸三の言葉を無視して精一杯の力を羽に込めて、健人をおんぶしながら自分の羽で飛んだ。
「ありがとう、2人とも」
私は振り返らずに2人から立ち去った。
「健人、健人!」
健人を連れてきたのは生命の水だった。
健人の足を生命の水の中に入れた。健人の足は一瞬もしないうちに元に戻った。
「健人、健人起きて」
「...ん天使?違う神琴だ」
健人が目を開けると確かにそこには健人を包む大きくて暖かい羽があった。
「私のこと、見えるの?」
私は心底驚いた。一度忘れてしまった、妖怪との思い出は一生思い出すことはないと聞かされていたから。
「俺、変な夢見たんだ。神琴のことも約束のことも忘れて神琴が見えなくなる夢」
そう言って健人は私を優しく抱きしめた。
「ごめん、ずっと一人にして。もう絶対一人にしないから。」
「それは無理だよ。私は本当は生きてちゃいけなかったの。」
私は健人の腕の中をすり抜けた。
「まだ、まだ志帆のこと引きずってんのかよ!」
「なんで、知ってるの。」
「聞いたんだ、坊さんに」
「お前はもう美紅じゃない!お前は神琴だ。神社に住んでる、不器用で優しくて責任感が強くて仲間想いの優しい''神琴''なんだよ。いつまで、美紅でいるつもりだ。いい加減気づけよ!お前の周りにはもう大切な人ばっかなんだぞ。
こんなのおかしい。こんなのおかしいよ。せっかくあえたんたんだぞ。」
わたしの頭の中には色んな人が浮かんだ。セムナイに幸三、河童に人魚、初めて声をかけてくれた木々、私たちを守ってくれるサグジ、そして目の前にいる健人。私はもう一人じゃない。きっとずっと気づいていた。けれど、ずっと私は大切な人をつくってはいけなかったと思っていた。そんなの意味などなかったんだ。私はもう一人じゃないんだ。ずっとずっと、誰かそばにいて欲しかったんだ。私は心の中に抱えていた鉛がすべて取れた気がした。
「だけど、私が行かなきゃこの森は終わってしまうの。」
「んなら、俺も連れて行って」
「だめよ、そんなの」
「神琴がだめっていってもついていく」
あまりにも真剣な顔で言うので私は頷くほかなかった。
「んじゃいこう。最後の戦いへ」
私たちは山のてっぺんを目指した。大切なものをまもるために