あの夏の日をもう一度





「ここが、てっぺんか」
「降ろすよ」
深い霧が二人を襲う。そのときだった。
「危ない!」
健人の後ろに影を見つけた。私はとっさに刀を振りかざした。
霧が晴れ姿を写した。そこにいたのは、いつも元気つけてくれた、河童だった。
「河童!何してんのよ。」
「違う!そいつ操られてんだ」
操られてる?河童が?
私は河童と戦うことなんてできない。それでも河童は容赦なく私の方へ刀を振りかざしてくる。
「お願い!起きて。私は河童と戦いたくなんかないの。」
その声に河童の動きは少しだけ止まった。
「逃げろ、早く」
けれど、すぐに戻ってしまった。いきなりのことで私は動けなくなってしまった。
「神琴」
誰かに押された。気づいたとき横たわって左腕をおさえる健人がいた。
「...健人、健人!」
「大丈夫、かすり傷だから」
河童の方へ目をやった。すると河童はなにかと葛藤しているようだった。
「...河童?」
「....れ....切れ!」
河童はふらついた足取りでこちらに歩み寄ってきたと思ったら私の刀を自分の腹にあてた。
「むりだよ、私にはできない!」
「やるんだよ!お前にしかできないんだ。いや、お前がいいんだよ!
お前は俺の光だ。人間っぽいっていっつもバカにされて一人だった俺に真っ先に声をかけてくれた。お前は俺をどん底から救った。また、救ってくれ!闇に落ちる前に」
私は河童の真剣な眼差しにおされ、小さくうなづいてしまった。
私は自分の手に力をいれた。そして河童の腹を突き刺した。すると河童の体は光始めた。
「神琴、今までありがとう。
俺はずっと決めてた、神琴が前に進むことができたら消えようって。まぁ、少し悔しいけどな」
河童は少しだけ、健人に目をやった。けれど、すぐに向き直して続けた。
「またな」
河童はまだ、薄暗い空の中へと消えていった。
「河童、ありがとう」

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