あの夏の日をもう一度
森は私たちとともに
別れと笑顔




「....と、健人!」
健人が目を覚ますとこちらに顔を向けている神琴の顔があった。
「なんでここに?」
何も知らない健人は困り果てた表情で辺りを見渡した。
「もしかして、全部夢なのか」
健人はこちらに顔を向けて真剣な眼差しで言った。それが私は面白くて笑ってしまった。
「そうだね。すべて、夢だったのかもしれないね。この村に起きたことも、健人と出会ったことも」
「は?何言ってんだよ。俺たちが出会ったのは夢じゃないだろ。」
「自分で言ったくせに」
私は泣きながら笑っていた。健人もそれにつられて笑っていた。二人の笑い声は静かな森に響きわたった。
「健人、私もう行くよ」
健人は、目を背けて涙目になった。
「...また、会えるかな。」
健人は驚いた顔をこちらに向けた。そして、自分のおでこと私のおでこをくっつけた。
「け、け、健人?なに?」
「覚えとこうと思って、また会えるように。約束しないか?」
「約束?」
「次は俺がお前のこと待つから、一生待つから。お前は絶対帰ってこい」
私は泣きながらうなづいた。そして、笑った。健人も目に涙をいっぱいに溜めながら笑った。
「もう行かなきゃ」
私の体はもう半透明になっていた。私は健人とつないだ手を離した。
「好きだよ、健人''またね''」
そこにいたはずの神琴の姿はもうなかった
「バーカ、おれもだよ」
< 24 / 27 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop