あの夏の日をもう一度
それから、神社の取り壊しがなくなり幸三とセムナイは今でも神社に暮らしている。
村の人とも和解し、今では村を救った英雄の刀として参拝者も数多くくるようになった。
健人は、夏休みがすぎて今あるここから遠い実家に帰った。
「また、遊びに来いよ」
「じゃあな、坊さん!」
健人はすこしでも暇があると村に顔を出すようになった。
その度に川に出かけた。
「ただいま」
「いっつも、いっつも、山のてっぺんで何してるのじゃ?」
「うーん、わかんないけど大切な人を待ってないと行けないから」
もう、だれも神琴のことなど覚えてないかもしれない。健人もたぶん覚えていないだろう。けれども、健人の首には石がかけたようなペンダントがかけてあった。
「坊さん、今日が最後の日になるかもだから」
「おう!じゃあな」
健人はバスに乗り込んで、当分来られないだろう村を目に焼き付けた。
「なんで、健人最後なの?」
「高校生になるからじゃよ。少し遠いらしくて、もう高校のあいだは来れないらしいんじゃ」
「寂しくなるね」
「そうじゃな」