あの夏の日をもう一度




「起きて下さい、3510さん」
「んっ...ふぁぁぁあっておい!」
目が覚めるとおっさんのかおが目の前にあった。つい、おっさんのかおを殴ってしまった。おっさんは怒ったような顔をしながら、涙目になっていた。
「ごめんって。わざとじゃないからね
あのぉ、反射条件みたいな?ね?」
「下、見てみたらどうですか?」
言われたとうり下を見ると
人がものすごく小さく見えた。
「ぎ、ぎゃーーーーーーぁ」
ここでようやく私はこのおっさんに
担がれているとわかった。
私は気を失いかけた。
「大丈夫ですか?もうすぐつきますから」
「ふぁい」

「着きましたよ」
おっさんの声で、私は起きた。
目の前には暗い山がそびえ立っていた。
おっさんはさくさく歩いて行ってしまった
しぶしぶ、それについていくことにした。

30分くらい歩くと
古いのにホコリ一つなく、手入れが行き届いた神社が見えてきた。
「さっ、ここであなたは暮らすのですよ」
「はっ?何言ってんの?
こんなとこで寝たら風邪引くだろ」
「幽霊だから、風邪はひきません。
ここの主には話はつけているので
心配ありません。」
そうだった、うっかり幽霊という設定を忘れていた。
「では、説明します。
ここで思う存分幽霊ライフを楽しんで下さい。そしてすこしでも生き返りたいと思ったら成仏してください。
行ってのとおり幽霊なので人には見えませんがたまに死者の国から転生したものには見えることもあります。まぁ、ときがたって忘れれば見えなくなりますが。
ってことで良い旅を!」
ポカーンとした私はそのまま5分くらい動かずにいた。気づいたときにはもう遅く自分の置かれた状況に頭を抱えることしか出来なかった。

「おい、大丈夫か?ねぇちゃん」
後ろから声がしたと思い、振り返ると誰もいなかった。いや、正確には気づかなかったが正しいだろ。だって、そいつは木々だったのだから。
「い、いま木がしゃべったよね?」
明らかに怖がった。いや、そりゃ怖いでしょ。
「当たり前だろ。俺らにだって命はある。
ねぇちゃんはないけどな」
木々が一斉に笑いだした。
だいぶいらっとしたがそこはなんとか応えた。
「おねぇちゃん。名前はなんというのだ?」
一人の木が言った。
名前なんて死んだときのしかない。
しいていうならおっさんがいっていた
3510くらいだ。だけど、何故か
「神琴(みこと)」
と答えてしまった。
「いい名だ。大事にしなさい。」
一番年老いたような声の主が言った。
「神琴よ、木々がささやくほうへむかいなさい。さすれば、君の光が君を導こう」

体が無意識に動き出し森の奥へ
足を進めた
< 3 / 27 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop