あの夏の日をもう一度
出逢い

出会い




私がこの森にきてからもう3年くらいたった。妖怪とは人間と時の進む感覚が違うため、一週間くらいしか経ってないように思えるのだが、死者は体は成長するらしい
今は小一くらいの背丈になっていた。
ソフィアの紹介もあり、多くの森の住人とも仲良くなった。だいぶ、森の土地勘もついてきて、今じゃ迷子にはならない。
今日はどこにいこうか?
川にいる河童にあいにいこうか
それとも、木々たちとおしゃべりしようか
悩みながら、歩いていると割と村に近いとこに出ていた。
「のどかわいたな」
真夏でカラカラになったのどを潤すために川を探した。

川に着いた時、私は驚いた。
背丈がおなじくらいの男の子が川のそばでたおれていたのだから。
「大丈夫!?」
私は駆け寄って声を掛けた。
「んっ....うぅん...」
男の子は静かに目を開けた。
「うわっ!だれ?」
男の子は目を開けるとびっくりして私から離れてた。私には、一応妖怪なので何故か飛べない小さい羽がついているらしい(私は見たことはないが)男の子はそれに驚いていたんだろう。
「私は神琴、ここの森に住んでる、うーん...天使?みたいな人だよ」
「天使?怖くない?」
「う、うん」
純粋でピュアな心の持ち主に天使だと嘘をついてしまった自分に私はすごく罪悪感を感じていた。そんなことおかまいなしに怖くないとわかった男の子は少しずつ私に近づいて来た。
「僕は狩野健人。よろしくね」
「それは分かったけど、なんでここで倒れていたの?」
「あのね、僕は今日からここに引越して来たんだけど、コンビニないしどこもかしこも田んぼばっかで僕怖くて帰りたいって神社に言おうときたら迷子になっちゃって気づいたらここにいたの」
前の私と一緒だ。いきなり、ここに連れて来られて怖くて怖くてたまらなかった頃の私と。私は男の子に昔の私を重ねてみた。そしたら、ほっとけなくて森の出口まで届けることにした。
「また、来てもいい?」
健人の問いかけに私は小さくうなずいてしまった。健人は満面の笑みをうかべて私に手を振って帰っていった。
「神琴、今の誰!」
「セムナイ!」
私はセムナイにさっきのことをすべて話した。
「だめよ、絶対にもう会っちゃダメ。
あんたの姿が見えるってことは死者の国から生まれ変わった人ってことよ。もし、あの子が私達のことをバラしたら、ここの森は誰も来なくなって枯れていくの、そしたら私達は消滅するんだからね!」
私はすっかり忘れていた。私は妖怪でほかの人間には見えないことを。前にもほかの人間に話しかけたけど声すら届かなかったことがあったのに。
私は健人に興味をもった。初めて私を気づいてくれた人間に
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