前編 かすみ草の恋 ー大学生編ー
いつもより少し遅い時間だったので


トシヤくん達やアイリ達にも会わず
珍しく2人で大学の門を潜ると


そこに有坂君が1人で立っていた。


私の顔を見ると真顔で寄ってきた


レイジが私を隠すように後ろに下げて
前に出ると


低い声で


「…何の用だ??」


「いや、スカした王子様には
なんの用もない…
後ろにいるミカちゃんに用事が
あるんだけど??」


と、レイジの事は気にした様子を見せずに笑顔で私の事を覗き込んだ有坂くん



有坂くん…普通にしてたら凄くかっこ良くて素敵な男の子だと思うのにな…


本当の有坂くんはアイリを助けてくれた
良い人だもの。


私はレイジの背中から
ひょっこり顔を出すと


「おはよう。有坂くん
どうしたの??」


「ミカちゃん、昨日はごめん!
俺の連れがあんな事して……
痛かったでしょ??
俺はミカちゃんに話したい事があって
連れて来てって頼んだだけなんだけど。
どうも喧嘩っ早くて。
アイリやケンゴにも謝っといて?」


「あー、うん。伝えておくね!
それより、私に言いたい事ってなに?
今みたいに直接声をかけてくれれば
私聞くのにな?どうしたの??」


「ミカちゃんはやっぱり
可愛くて優しくて今すぐ胸の中に
閉じ込めたい。
誰の目にも触れさせたくないな…
どうしてもミカちゃんが欲しい。
こんな気持ち初めてだし
どんな卑怯な手を使ってでも
山田礼二から奪うから……」


私の事を射るような目で見つめて言った


すると、レイジが有坂くんのすぐ目の前
まで近寄るとさっきよりも低い声で


「てめぇ、黙って聞いてれば
好き勝手言ってんじゃねぇぞ…
今すぐ俺にヤられたいのか??」


ヤバイー!!


これはレイジの怒りが通りこした時の
声だ…


私はこんな背中だし今は止めに入る
にも一苦労だよ。


すると有坂くんはレイジの目を
逸らす事なく見ると


「いや、今はやめとく…
俺、勝てない勝負はしないもんなんだ。
昨日ケンゴ達の前でやらかしちゃったからバレてるかもしれないけど…
今の俺じゃちょっとダメだ。
右肩が上がらねぇ…
ぶっ殺してやるから首洗って待っとけよ
お前なんかこの俺の敵じゃねぇ。」



「あっ、そう。この前俺がやったやつ
まだ治ってないんだ! ダッサ(笑)
まぁ、あの程度じゃ次は俺に傷ひとつ
つけれないと思うけどな〜
それにミカはお前なんか
眼中にねぇんだよ
うぜぇことして俺の女を困らせるのは
やめてくんねぇかな」


「まっせいぜい今は好き勝手
言ってればいいさ…
あれが俺の本気だと思ったら大間違いだ
俺は昔の俺とは違う。
勝つためには手段は選ばない…
でもな、お前だけは俺がぶっ殺す!!
そのムカつくくらい整った顔
形が変わるまでぶん殴ってからな(笑)
ミカちゃんは俺の女になる。
誰にも渡すもんか!
今はせいぜい好きにしてればいいさ
束の間の幸せを噛み締めておけよ
ミカちゃん、またね!
そういう事だから…
ミカちゃんがなんと言おうとこれは
決定事項だから…」


そう言うと有坂くんは私たちから
背を向けた


あっ!なんか言わなくっちゃ!!


「有坂くん!!!」


有坂くんを引き止めると


「ん?なに??ミカちゃん??」


「有坂くん、なんで私がいいんだか
私にはわからないけど…
レイジは負けないよ?
それに私はレイジの側にいるよ?」
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