前編 かすみ草の恋 ー大学生編ー
朝、インターホンの音で目が覚める


ピーンポーン


ピーンポーン


ピーンポーン


「はい…」


と眠い目を擦りながら玄関のドアを開けると


「ミカァ〜 わぁ〜〜〜ん
助けてぇ〜〜〜〜〜〜」


そこには、一週間前に自宅へ帰った
リンカが大きなバックとリョウクンを抱いて立っていた…


「ど どうしたの?リンカ??
とりあえず、中に入って??」


「ありがとう、ミカァ〜」


「何か飲む?リンカ??」


「暖かいお茶が飲みたい…」


「うん、わかった…」


ポットにスイッチを入れてから
ソファの上にバスタオルを引いた


「とりあえず、そこにリョウクン
寝かせて?」


と言うとリンカは黙って
リョウクンをそこに寝かせた


すると


「ギャァ〜 オギャアオンギァ〜〜〜」


途端にリョウクンが火がついたように
泣き出した


「わぁ〜〜〜〜〜〜〜ん
ミカァ〜〜リョウがもうずっとこんな
感じなの…グスン…
病院に連れて行っても、元気な男の子ですねって言われておわり…
ねぇ、私どうしたら いいのぉ?
わぁーーーーーん」


リンカも大号泣…



すると急にリョウクンの泣き声が
ピタッと止まったので振り返ると




レイジがリョウクンを抱いていた。


リョウクンが泣き止むとリンカも
少し落ち着きを取り戻したので


暖かいお茶をリンカに出し


「レイジ、コーヒー
ここに置いておくね?」


と言って
私はリンカの真正面に腰をかけた。


するとリンカがぽつりぽつりと話だす。


「帰った日からね
リョウはずっとこんな調子で抱っこしてないと24時間関係なく泣くの。
バンリも忙しいのに、夜中になってリョウが泣くと一緒になって世話をしようとするの。
毎日一生懸命働いてくれてて
私は働いてないから、それは悪いと思って…夜泣かせないようにするためには
夜中中ずっと抱いてるしかなくて……
昼間も家事をしながら片手でリョウを抱きながらしてて
さすがに夕飯を作る時は危ないから
泣きっぱなしにさせてるんだけど
声が枯れても泣き続けるの。
食事も睡眠も満足に取れてないからか
母乳の出も悪くなって
ミルクを足してるんだけど…
そんなんでいいのかな?と思って…
とにかく今いっぱいいっぱいでママのとこに来たのに、ママは仕事でいないみたいで……」


と言うとまた下を向いて涙を拭った。


リンカ…


いいママだね


よく頑張ってるじゃない


「リンカ…とりあえず今何したい?」


「お風呂にゆっくり入りたい。
ゆっくりご飯が食べたい。ゆっくり寝たい…ダメだよね?私って…」


「何言ってんの??
良いに決まってるじゃない!
いいんだよ?全部やろう(笑)」


と言うと私はお風呂のスイッチを入れた


「リンカ…何食べたい?」


「温かいご飯と温かいお味噌汁に
温かい煮物…最近冷めたものばかり
食べてるから…
リョウがヤケドしたらと思うと温かいものは食べられない…」


「わかった!作るね!!
あと、うちに昔のリンカのお泊りセットが確かこのタンスの中に……あったあった!
これ、何かあった時のために洗濯して
おいたから、お風呂入ったらこれに着替えて。この段はリンカの服しか入ってないから好きに使ってね!バスタオルの場所も前と変わってないから勝手に出して使ってね〜」


と言いながら、リンカに笑いかけると
私は鼻歌を歌いながらキッチンへ入った


そんな私達のやり取りを黙って見てた
レイジは


窓を開けて外を見渡すと


「姉貴!リョウはもう外に出て
日に当てても大丈夫??」


「あっ!うん…
いいか悪いかわからないんだけど
天気のいい日に1日30分くらいは出してるし、買い物にも普通に連れて行ってる…置いていけないもの…」


「わかった…
おい!リョウ散歩に行くか!」


と言って、レイジはリョウクンを連れて
散歩に出かけて行った。




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