前編 かすみ草の恋 ー大学生編ー
着替えも全て終わってリンカママと
更衣室を出ると


レイジと坂本さんが待っていた。


女の私の方がどうしでも
支度に時間がかかってしまう


「お待たせしてすみません!」


「では、またさっきの応接室に戻ろうか?」


「「はい」」


応接室に入ると、賢太郎さんが
待ってくれていた


元いた場所に皆が腰をかけると


坂本さんがパソコンを持ってきて
撮った画像を


見せてくれた。


すごい……


こんなふうに撮れてるんだ……


私はただ、カメラの前でレイジや
坂本さん、スタッフの方たちと
話してただけなのに……



凄く自然に撮れてる……



私が思わず、目を奪われた写真は


レイジが私を後ろからギュッと抱き締めてて、私はレイジを見上げて笑ってる写真。


この画像…


自分でもビックリするくらい
よく撮れてる…


坂本さんは凄いカメラマンだな〜


レイジはモンスター級のイケメンだから相手が私だと見劣りすると思ってたけど


レイジに包まれて笑ってる私は
驚くほど自然体で


幸せそうだよ。


いや、事実幸せなんだけど(笑)


リンカママも、坂本さんも、賢太郎さんもこの写真を凄く気に入ってくれたみたい。



そして、一通り画像を見終わってから
賢太郎さんが切り出した


「2人とも本当素晴らしいよ!
この前、無理強いしないと言ったけど
まさか、初めての撮影でこんな心に響く良い作品は初めて見たよ。
是非、うちと専属モデル契約を結んで貰いたい。出来る限り要望も聞かさてもらうから。頼みます。」


と賢太郎さんが頭を下げてきた


すると、レイジが私の方を見たので



私は黙って頷いた。


レイジならこのやり取りだけで
私がモデルを引き受ける意志があると
理解したみたい。



フッと私に向かって微笑むと
レイジは賢太郎さんの事を
見て切り出した



「わかりました。やらせて頂きます」


「本当かいっ??」


「はい、ただし、自分はミカ以外の
女性モデルとは絡みたくありません。
ミカにも俺以外の男性モデルと絡ませたくありません。
ワガママかもしれないけど……
仕事だと割り切っても俺には無理です。
俺は、ミカとだからやってもいいと思ってます」


とレイジが言った。


うんうん。
私もレイジとじゃないとこんな自然体でカメラの前に立てないよ


私もまた、プロになる意識は低いと思う
ワガママとは承知の上なんだけど…


賢太郎さんはレイジと私の表情を見て


「いや、そんなっ!
ワガママなんて事はないよ!!
元々、私が無理を言って君たちをこの世界に引っ張りこんだんだし…
君たちが1番良い状態でいてくれないと
良いモノは出来ないんだ。
うちは今まで専属契約を結んだ事は無いんだ…君たち以上に私の心を動かした
モデルはいなかったから。
だから至らない点もたくさんあると思うけど…
全力で君たちをサポートするからね?
スタッフ達からのウケも凄く良いんだ!
撮影に関わった全員に
2人が首を縦に降るまで帰すなって言われてるんだ(笑) 本当ありがとう。
ミカちゃん、礼二君。」



「こちらこそです…
声をかけて頂いてありがとう
ございます。正直、戸惑った面もありました。でも、賢太郎さんは俺たちの意見を尊重してくれました…
俺のワガママも聞いてもらえるなら
出来る限りの努力はします。
こんな世界的にも有名なブランドなので
てっきり、専属モデルは自分たちの他にいると思ってたのですが…
よろしくお願いします」


とレイジが頭を下げたので
それに続いて私も頭を下げた。



すると、それまでずっと黙り込んでいたリンカママが


「良かったわねぇ〜!賢太郎!!
礼二、ミカちゃん、何かあったら私になんでも相談してね!私はあなた達2人を徹底的にサポートするから安心して。
でもね、専属って事は
Kentarou Okanoの広告塔となるわけだから責任もあるの。時にはカメラの前だけでなく、CMに出演する事もあるわ。
海外のフアッションショー
国内のフアッションショーにもモデルとして出る事になると思うわ。
そのためにはウォーキングとか姿勢とか
勉強しなきゃいけない事もあるの。
頑張れるわよね?2人とも……」



そっか…


そうだよね、ちょっと軽く考えてたけど
専属モデルって事はそういう事だよね…


でも、私のくだらないコンプレックスのためにレイジは私についてきてくれた

そんなレイジのためにも


自分のためにも


スタッフさん達や賢太郎さんの思いも
無駄にはしたくない。



でも、レイジはどう思ってるのかな?



するとレイジが


「ミカ…どうする?やれそうか??」



「う うん。私頑張ってみたい
レイジが側にいてくれたら、怖いことは
何もないよ?」


「よしっ!じゃぁ決まりだなっ!
母さん、色々と頼むよ。」


「任せときなさい(笑)
早速、兄さんに連絡しないと…
ちょっとみんな、待っててね!」


と言って、リンカママは携帯を握りしめ
部屋から出て行った。


そして、私たちは2人で頭を下げた。



「礼二くん、ミカちゃん、
本当にありがとう!!ではこれから
専属モデル契約に入ります………
まずは、梨沙子を待とう」


と言って賢太郎さんが私たちに優しく
微笑んだ。


その隣で坂本さんも満足そうな
笑顔で頷いた。


私、頑張るよっ!
レイジ…ありがとう。
ついてきてくれて…


レイジは本当こういう時頼りになるな…


自分の意見を目上の人にもハッキリと言えるんだもの。


私のが年上でしっかりしないといけないのに、私よりも2歩も3歩も前にいる。
リンカママが退室して、それだけで
ちょっと不安な私



すると、レイジが私の手をギュッと握ってきたので、見上げると


フワッと優しく笑ったレイジ…


本当なんでこんなかっこいいの…

でもそれ以上に私の不安がスッと抜けて
気分がだいぶ楽になった


「レイジ…ありがとう…」


とレイジの手を握り返し
囁くような小さな声で言うと


「んっ?何が…?」


と言って優しく笑ったレイジ。


本当もう大好きです……














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