あなたに出逢えた
「話を聞いて、栞菜」

話なんて聞きたくないよっ!だって、やっとママの近くにいられるんだもの。とられたくないよっ!まだママと二人がいいっ!



「俺から説明します」
「嫌よっ!誰の話も聞きたくないのっ!」




それでも男は気にせずに私に近寄ってくる。


「来ないでっ!私に近寄らないでっ!」



私は男を睨みつける。でも、それでも近寄って来る男に私は悲しくなった。力でねじ伏せようなんて思っていないだろう。男の瞳から、ママのことを真剣に考えていることが分かるから……だから、嫌なんだ。



「栞菜ちゃん。俺は、宮野慧(みやのけい)って言うんだ。見ての通り、俺も日本人。君のお母さんの美知子(みわこ)さんに惚れてね。一年前から付き合っているんだよ」


一年前から……。私が真っ暗なところにいた時だ。ママには伝えてないから知らないけど、親友が死んだことだけは伝えた。病死にしておいたが、本当は真実を告げてしまいたかった。でも、今は告げなくてよかったと思った。だって、さっきのママは幸せそうだったから……。


でも……嫌。ママが幸せで嬉しいけど、私から離れていっちゃうのは嫌。




「栞菜、私、慧君と結婚したいって思ってるのよ。そうするとね、あなたにお兄ちゃんができるのよ。同い年で、あなたと同じ高校に通ってるって聞いてるわ」





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