あなたに出逢えた
「ママ、聞こえなかったんじゃなくて、聞きたくなかったとか?」


美知子さんに本当に聞こえなかったのかと聞く若名。それにこくんと頷く美知子さん。


「マジか……」


あ、つい本音が……。


「どうしたの、瞬くん」


良かった。誰も聞いてなかったみたいだ。その時、若名と目があった。
彼女は口パクで俺に「バカ」と言った。


「はぁ!?バカって何だよっ!」


「瞬!どうしたんだ」


やばっ。口パクで言われただけだから、周りにはわかってないんだ……。
ミスった……。


「何でもねぇ……」


俺は、そっと若名を見た。

でも、見て後悔した。


あいつ、笑ってやがる……!


涙目になっている若菜。必死に抑えているようだ。

そしても、もう一度俺に「バカ」と言ってきた。

おれ、そんな馬鹿じゃねぇし。てか、バカバカ言いすぎだろ。



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