あなたに出逢えた
「分かった。ただし、これは栞菜がもっていてくれ。見たくなければ捨てればいい。じゃぁ……」


若名の涙は止まらない。きっと見られたくないだろう。自分の泣いてる姿なんて。


俺はこの場を立ち去ろうとした
「やっ……」
が、若名に服の裾を引っ張られた。


「……行っちゃヤダよ、瞬…………」




こいつ、今俺の名前呼んだ?しかもこんなときに。
でも、それだけつらいのだろう。俺に頼る程、苦しいんだろう……。

名前を呼んだら、ちょっとは落ち着くだろうか。

「栞菜……大丈夫だ。俺はここにいるから。いなくなったりしない。絶対に……お前の前から消えたりしないよ」


約束だ。お前に大切な人が現れない限り、俺はお前のそばを離れないよ……。
だから、心配すんな……。




今はそんなことしか言えない。本当は、今お前を幸せにできるのが俺でないことぐらいわかってる。

でも、放っておけないんだ。


「しゅ、ん……ママ、は……な……んで…………」



必死に声を出して俺に訪ねてくる栞菜。




「栞菜に認めてもらえたのが相当嬉しかったみたいだ。栞菜へのプレゼントを買いに行っていたらしい。その時に……。結婚してすぐだったし、何より自分の娘が喜んで認めてくれていたんだ」






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