あなたに出逢えた
あれだけ嫌がっていた栞菜が、笑顔で嬉しそうに言っていたおめでとうの言葉。



それが、美知子さんの一番嬉しかった言葉だろうな。

でも、それを言ったら、若名は自分のせいだというかもしれない。浮かれ過ぎだって一度も言わなかった。
それどころか、その姿を嬉しそうに見つめていた。



「私が、ママ……の、しあわ、せを……奪った……」


「違うっ!」


俺は、栞菜を抱きしめた。


「あたしが、ママの……わあぁぁぁああぁぁ!」

「違うっ!違う違う!栞菜のせいじゃい!美知子さんは嬉しかったんだ!栞菜に認めてもらえたことが。それを俺は栞菜のせいだとは思わない!」


壊れてしまっている。栞菜の心は粉々だ。昔、親友を亡くした。そして今、母を亡くした。やっと家族になれた母を、亡くしてしまった。


大好きな母を。今、幸せになれた母を。



事故が起きたところは見てなくても、そのあと駆けつけたんだ。母の姿を見たんだ。そして、目の前で亡くしたんだ。




普通は、混乱したら相手の母親を責めるだろう。



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