あなたに出逢えた
「その時に、傍に居てくれた人がいたらしいんだ。何かするわけでもなく、ただ寄り添っていてくれた人がいた……」



「寄り添ってくれた人……俺は、そうなれるのか……?」


親父は、俺を見て微笑んだ。



「瞬の気持ち次第さ。瞬が、ただ黙って傍にいられるだけの勇気を持てるか、だな。栞菜ちゃんを否定することをしそうだ、今のお前は」



「黙って、傍に……」


「今のお前は、どうにかしようと必死だ。先を急ごうとしているだけだ」

急ぎすぎている……。

「遠回りをしたっていいじゃないか。お前は、近いところしか見えていないんだ。もっとよく周りを見ろ。きっとどこかにヒントがあるさ」



「急ぎすぎなのか、俺は……」


「あぁ。今の栞菜ちゃんには、ペースが早すぎるな。もっとゆっくり。栞菜ちゃんのペースに合わせるように。先回りはするな。ただ、隣にいるだけだ」



「ただ隣に……」


俺にできるかはわからない。だけど、それで少しでも栞菜の笑顔を取り戻せるなら……。


「俺、傍に居たい。……あいつの笑顔を見守っていたいんだ……」



「そうか」


親父は、そう言うと立ち上がった。


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