あなたに出逢えた
「少し考えておく。それだけなら、もう出ていってくれない?」
「あと一つ」


まだあるのか。

「さっきの電話の相手は河合だろ?」

聞いていたのか……。


嘘をつく必要はないと思って、私は頷いた。

「じゃあさ、あの言い方はないんじゃねぇの?親友だろ?河合だってすごく心配して、俺にもたくさん電話してきたんだぜ?」


「関係ない。私は、今は何も考えたくない。何も感じたくない。……決めたよ。帰るよ日本に。私一人で」


「は?ふざけんなよ……!」

そうだ。もうこの二人は関係ない。入籍しているけど、私は一人がいい。



「反論される必要ないよね?帰るって話を持ってきたのは瞬や慧さんでしょ。その中に、私は一人で帰っちゃいけないなんてルールあるの?」


瞬は唇をかみしめていた。



「ないんでしょ。慧さんには私から言っておく。支度があるから、瞬も早く出ていてね」



私はそう言って瞬の顔を見ないまま部屋を出た。








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