あなたに出逢えた
瞬や莉音には悪いって思ってる。でも、そんなに甘えるわけにもいかないの。

本当は、一年いるつもりだったけど、こんなことが起きてしまったんだ。表情を亡くして、少しでも心配されることを減らせばいい。


苦しみすぎて表情がなくなったと思ってもらえればいい。そして、そんな私を捨ててください、慧さん……。



「ごめんなさい……」


その時、ふと思い出した言葉があった。ママの言った言葉だ。

『じゃぁ、お手紙を書いてみなさい。素直に自分の気持ちが書けると思うわよ?』


「手紙……」


ママ、ごめんね。条件、破っちゃう。直接渡さなくちゃいけないって約束だったよね。

ごめんね、渡せそうにないや……。

でも、伝えなきゃいけないんだ。


何が何でも、瞬と莉音と慧さんに伝えなきゃいけない。


住所が変わって連絡を莉音からもらった覚えはないから、前に教えてもらったのでいいだろう。




……学校は、違うところに行く。莉音とは別れる。

このケータイも使うのをやめて、ほかのケータイにしよう。

アドレスも全部変えて、今までの自分を捨てて、新しいところでやり直そう。


瞬と慧さんには、ここに書いたものを置いていく。莉音には日本に帰ってから送ることにして……。



「その前に、夕食の準備」



私は、急いで支度をしようとキッチンへと向かった。





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